自己開示がいいという

引きこもりでメンヘルを隠して生きているから、自分のことを正直に話せる相手がいない。職場ではもっぱら悪意が渦巻いているし、弱みを見せるととやかく言われるというのが骨身に染みているから、なおさら頑なになりがちだ。

ネットで正直になれる人もいるみたいだが、僕には無理だ。酒の席なら適当に流れる程度のささいな言葉で、さんざんに罵られる人を、あまりに多く見すぎた。不特定多数が見る場で価値観を表明すれば、意図していないメッセージまで伝えることになり、いらぬ諍いを生みかねない。揉め事がしたいわけじゃないし、言い争いがしたいわけでもない。ただ自分に正直になりたいだけなのである。告白をするには、僕はあまりに罪を重ねすぎた。

眠れぬ夜は昔のことを思い出す。子供の時に通ったおもちゃ屋、予備校のキャンパス、大学の並木道、付き合っていた人とともに過ごした場所、幸せだったと思うたびに苦しくなる。あの時はもどってこないし、同じように感じることはもうできない。みんな過ぎ去ってしまって、この思い出を共有する人もいなければ手段もない。ただ、独りで心の穴の残した痛みを感じつづけるだけだ。

同じ目線で話せる相手がほしいなと思う。僕を否定せず、受け入れてくれる何者かが欲しい。自分の生を、罪を、痛みを、良しとしてくれる人が。神を信じていれば楽だったのかもしれないな。